ヨーロッパ交流紀行 2012 初秋
- 9月5日(ドイツ)
- ホーエンシュタイン研究所訪問(Hohenstein Institute)
- 9月6日(スイス)
- エンパ テスト マテリアルズ社訪問(EMPA Test Materials)
- 9月7日(デンマーク)
- デンマーク技術研究所 DTI訪問(Danish Technological Institute)
- 9月8日(デンマーク)
- コペンハーゲンを散策
ドライクリーニングに潜む問題点
揮発性有機溶剤(VOC)・発ガン性物質であることのほか、光化学オキシダント(大気汚染)の原因物質であり、アメリカでは神経障害などの健康被害が報告されており、カリフォルニア州では2018年に全面撤廃が法制度化さています。
これらの問題を解決するために、ドライクリーニングから水系洗浄(ウェットクリーニング)への移行が世界的な問題として注目されています。このことは、アパレルなどの繊維製品業界・商業洗濯業界の各関係機関の多くが認めるところです。
しかし、水系洗浄にも問題がないかと言えば、やはり、越えなくてはならない技術的課題が残されています。たとえば、繊維の損傷、シルエットの損壊、仕上げの生産における困難さの課題などです。
ハッピーでは、この水系洗浄の技術的課題を克服することに成功しています。
特に「無重力バランス洗浄方法」は、2006年ドイツのホーエンシュタイン研究所やNRW州立ニーダ―ライン大学によって、その優秀性が立証されています。
今回、あらためてその優秀性を広めるために、ドイツ・スイス・デンマークの国立研究機関を訪問します。その議論と意見交換の内容は、ドライクリーニングの代替となる水系洗浄が日本に存在し、ドライクリーニングから水系洗浄への移行が可能だという提案です。
ハッピーは、世界へ向けて、水系洗浄『無重力バランス洗浄方法』の認知度を高めて いきたい。そして、地球環境・健康被害・省エネやCO2の問題をクリアして、日本だけでなく世界のお役に立ちたいと願い本格的な行動に移します。
無重力バランス洗浄 実証実験の報告
9月5日(ドイツ)
ホーエンシュタイン研究所訪問…
ドイツ シュツットガルトに於いて
初日終了。
前日の11時間のフライト1時間半の電車移動を含めて、自宅からの移動時間は、約20時間に及ぶ長旅は、さすがのタフな私も、いささか疲れ気味でした。
6日の早朝、4時から本原稿の推敲に入りました。昨夜は、2004年から来訪するようになって、初めて、通訳の方(見目女史)と一緒の食事でした。
単純ではあるのですが、ここで、思ったことは言語の尊さです。食事までを美味しくさせてしまうということです。肉料理でしたが、味は日本にない独特のものでした。しかし、肉そのものは、日本の方が絶対的に優れていると思いました。
ヨーロッパには、過去4回訪問をしていますが、安心して、楽しい夜の食事ができたのは5回目の今日が初めてでした。
ホーエンシュタイン訪問の感想報告
ホーエンシュタイン研究所には2006年以来の訪問で、研究所が大きく様変わりしていたことと、研究所の増設に次ぐ増設に驚きました。増設は、成長のためには、普通一般的なことで、驚くことが不思議と言えば、それまでですが、いったい何に、驚いたのかと言いうと、2006年から工事を着工して、完璧を求めて工事を続けているということに驚きました。
ドイツ人の『より良いもの』を求めるという頑なまでの気質。『徹底して追求する。理想の追求』というのは、私の生き方と似ていて、私が、ドイツに来て、ドイツの方々に大切にしていただけるのは、ドイツ人の気質と似通ったところがあるからなのだろう、と、自画自賛しており、自己満足的に納得しています。
ホーエンシュタイン研究所は、世界の、およそ80ヶ国に、さまざまな業界のクライアントを常時・常態で関係を持ち、さまざまな実証実験、検証・研究に余念のないことを知って、グローバルな進行政策に共感しました。
さて、ホーエンシュタイン研究所のDr.タゲさん、Dr.シュミットさん、Dr.ベリンガーさんの歓待を受けて、アッという間の2時間強の議論と意見交換でした。
全体を「まとめる」と、ドライクリーニングに問題があるのは言うまでもないけれど、ドライクリーニングの代替溶剤が「水」になるか、という問題においては、必ずしもそうはならない。両方の良いところを活かしていくのが、妥当だということで意見の一致をみました。
しかしながらドライクリーニングには、健康・環境の問題があるということの認識を同じくし、水系洗浄を増やしていくことが地球環境・健康被害、つまり人類にとって何より必要であり、有効な解決策であるという共通認識を得ました。
ドイツでは、1992年に塩素系有機溶剤(パークロールエチレン=テトラクロロエチレン)使用制限方が制定されたため、6割のクリーニング店が閉店に追い込まれたそうです。経済と環境のバランスを崩しても、環境と健康に有用なクリーニングをしたいというドイツ国民の強い意志が働いています。これが、ドイツ人の気質というものなのだと認識しています。
そして、また、アパレルメーカーは、決められた洗濯取扱いの法律によっての厳しい括りがあり、その洗濯取扱い絵表示通りにクリーニングをおこなった結果、問題が生じた場合の全責任はアバレルメーカーが負うというものです。
日本では、商業洗濯の取扱いがJIS化されてなく、有効な決め手のない曖昧さでクリーニングがおこなわれているのが現状です。
2014年には、その商業洗濯基準をJIS化しようとしていますが、どこまで徹底できるのか、疑問の残るところです。ドイツのような徹底した行政法だけでなく、刑事法も含めた監視体制が必要のようにも感じられました。そうすることで、クリーニングのプロ世界の暗黙知がなくなり、形式知に変換されて日本のクリーニング業界が国際標準化になっていくのだろうと痛切に思いました。そうすることで、晴れて、サービス産業界の仲間入りということが果たせるのではないかとも考えさせられる瞬間でした。
写真左 : 会議室にて記念写真。右からDr.ベリンガー氏、Dr.タッゲ氏、Dr.シュミット氏。
写真右 : 古城を思わせる玄関前で勢揃い
つまり、クリーニング業界には、ドライクリーニング使用制限法で罰則規定を設け、一方のアパレルメーカーには、洗濯取扱い絵表示の基準認証を厳しくすることで、アパレルメーカーにも、商業クリーニングにも納得させて、両者の関係が片手落ちにならないように制限をしています。つまりは、消費者・国民目線であるという置き換えであり、ドイツ人の国民性であり、日本も、この理想の追求をしなければならないと納得しました。
ハッピーが提示した、科学的根拠に基づいた洗浄のメカニカルアクション(MA値)洗浄後の仕上がり感については、繊維製品(衣服)に対して、さまざまな科学的データに基づいたテスト・試験検証は必要であるが、人間の持つ五感(官)が最終決定するだろうというのが、Dr.タゲさんの意見で、他の二人のドクターも同じ意見でした。
なぜなら、複合的に使用される繊維製品において、単一の試験データより、シルエットや素材の全体、つまり衣服全体が持つ雰囲気を大切しなければならないということでした。
この意見には、私も、大いに賛同しています。とは言え、科学的根拠を蔑ろにするのかと言えば、決してそうではなく、科学的根拠を明らかにしたうえで、雰囲気や色彩・風合い・シルエットを大切にすることは言うまでもありません。
つまり、科学的な試験データが正しければ、自ずと感性の部分も正しく評価されるということの置き換えでもあるということであり、その意見の一致もしました。
また、ヨーロッパの方々の国民性として、古くからある文化を大切にし、外の国のモノ、新しいモノには抵抗して認めようとしないのが特徴のようです。
しかしながら、ハッピーの新洗浄方法・原理は、ホーエンシュタインでは、すでに認めており、いくつかのテスト条件の追加・補完をして、ハッピーが世界で水系洗浄の普及することに尽力したいとの意向を示されました。
ここまで言い切られることに、コトの重要目重大さを改めて痛感し、責任の大きさをヒシヒシと心に感じています。
すでに、ハッピー社は日本のハッピー社ではなく、世界のハッピーになっているのだと実感しました。
幸先よく、本日の意見交換を終わりました。
6日は、エンパ社に訪問して、メカニカルアクションと洗浄効果(汚れ落ちと風合い感の相関について)の科学的な意見交換をします。
ドイツ シュツットガルト
ホーエンシュタイン研究所
(Hohenstein Institute)
ホームページ
写真左 : シュトゥットガルト空港からスイス・チューリヒ空港に向けて出発
写真右 : スイスでの照り焼きビーフステーキ、いただきます!
9月6日(スイス)
エンパ テスト マテリアルズ社訪問…
スイス 繊維の街
静かな工業地の一角にある建物。外観は殺風景なビルですが、その中は、繊維素材の研究検査の最先端技術を利用した機器で埋められており、人間と機能の技術が折りなす綾糸のようなものを感じました。
社長の名前は、「フェーさん」と言われ、一見は朴訥に見受けられるのですが、繊維素材の検査や試験研究のことになると人が変わって、研ぎ澄まされた剣のようになり、その厳しさは、第一部下の「ポートマンさん」も同じでした。
そういうお二方に迎えられ、厳しい雰囲気の中で、3時間半を超える議論と意見交換をおこない研究所の中の案内をしてもらいました。結論を言えば、われわれの洗浄の論文を読んで、無重力バランス洗浄に大変な興味を持たれていました。
私としては、今まで、多くの方と議論をしてきましたが、特許番号の質問を受けたのはフェーさんが初めてでした。フェーさんには、それほどに強烈なインパクトがあったようで、海外のベンチャー企業独特の嗅覚が働いて、ハッピーが持つ特許の回避方法でも考えようというのか、という詮索をしたり、その一方では、彼らと組することで強大な市場ができる可能性も秘めているとも思ったり、と、いずれにしても複雑な心境になったのは事実です。
お二人が言うには、論文に書かれてあることが事実(事実に決まっているが、)とすれば、理想の洗浄方法であることを認識したようです。来日の際には、ハッピーの訪問の約束をして名残り惜しく別れました。
まとめ
① エンパマテリアルの主たる事業は、検査機関であり、検査のための標準試験の材料を製作販売しているところなので、実質的なISOの関係先ではなく、改めて、ISOの規格決定権を持っているところとコンタクトを取ることを課題とする。
ISOのウェットクリーニングの概念が根本的に間違っていることを確認しました。単純に、クリーニングの商業洗濯取扱いの問題ではなく、私のエンパマテリアルで得た情報が真実であれば、繊維製品におるJIS規格が機能しなくなる問題をはらんでいると考えられます。
ここでは、多くは語れないのが残念です。事は、それほど重要なことであり切迫しています。
② しかし、ここでも、ドライクリーニングから水系洗浄に徐々に移行しなければならないという提案があった。
③
また、エンパマテリアルの洗浄機のメカニカルアクションの検査試験布は、2011年にIEC(国際電気標準会議)で、唯一認められているということが理解できた。
④
このことは、メカニカルアクション検査において重要なポイントとなる。
⑤
つまり、デンマークのMA試験布より精度の高い検査試験となる。
⑥
結論としては、異常なほどに無重力バランス洗浄装置の評価が高く、この原理・方法であれば、ドライクリーニングの代替として水の使用が可能になるかもしれないという評価を得た。ただし、現物を見ていないので、結論は出せないという但し書き付きではある。
スイス チューリッヒ
エンパ テスト マテリアルズ社
(EMPA Test Materials)
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9月7日(デンマーク)
デンマーク技術研究所 DTI 訪問…
北欧屈指の世界都市コペンハーゲン
DTI訪問
広大な面積の緑の木々の中に、いくつかの研究棟が点在しています。美しいという表現と環境の配慮には脱帽でした。
結語
昨日に引き続きメカニカルアクション(MA)試験検査機関であるデンマークのDTIを訪問。
やはり、無重力バランス洗浄の高い評価に尽きてしまい、最も大切なウェットクリーニングの話が霞んでしまいました。
しかし、ここでもエンパ同様、ドライクリーニングから水系に移行するのが正しいと言われました。
しかしながら、ウェットクリーニングについてのISO規格の関係性となると情報は大変少なく情報把握に苦労しました。
また、デンマークのクリーニング事情になると、ほとんどクリーニングを利用しないようで、DTIがISOに与える影響力は皆無に近いと感じました。ウェットクリーニングがドライクリーニングに変わる概念は全くないようです。また、デンマークでは、石油系溶剤の使用は法律で禁止されているそうです。ヨーロッパでは、ほとんど使用されてなく、ISOのF?「なんですか、それは?」という程度の認識でしかなく、ドイツ・スイス・デンマークの三ヶ国共通でした。
DTIの質問で、MA試験布について、計測の問題点を指摘しましたが、その質問の答えは明確ではありましたが、課題を克服するものではありませんでした。つまり予測の範疇内てした。
個人的な見解を述べますと、エンパマテリアルのMA試験布(フライングクロス)との精度と使用難易度の問題において、再検討の余地があると思いました。
デンマーク コペンハーゲン
デンマーク技術研究所 DTI
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9月8日(デンマーク)
デンマーク・コペンハーゲンを散策
ドイツ・スイス・デンマークの
国立研究機関訪問を終えて
デンマークは、今朝の気温は12℃、日中は18℃くらい。そして、風の強いところです。
その強い風を利用して電気の供給をしており、ホテルの部屋から何十本もの発電の風車が見えています。
ヨーロッパの人たちは、環境に対して敏感に反応し、自分たちの生活を自分たちの手で守ろうとします。ヨーロッパへ来て、風車の怪物に挑むドン・キホーテになぞらえたりしながら、コペンハーゲン散策を楽しみます。
また、デンマークは、半数近くの閣僚を女性が占めているそうです。女性の社会進出によって確実に福祉の制度設計が良くなり、社会福祉国家になったと国民は大喜びらしく、その結果、GNH(国民総幸福度)が世界一番になっています。
ところが最近では、あまりにも公務員が増えて既得権益を貪るようになったことで、GNHの一番は、ブータンに奪われたのだとか、町の雀たちの評価は厳しくなっているようです。
しかし、私の目から観ると、アッチもコッチもゴミだらけで、決して美しい街とは言い難く、いたるところに煙草の吸い殻の散乱、落書き、秩序のなさ、電車の駅も飛行場も、道路も、公共施設も綺麗な所を探すのは至難の業です。
ローマがそうであったように、公共施設のメンテナンス・維持管理を怠るようになれば国の衰退を意味するとか。他人事ではなく、日本も気をつけなければなりません。
そして、デンマークと言えは、「アンデルセン童話」。どこが舞台になっているのか、子供の時からの知りたい謎の一つで、やっと巡り会えました。想像通りではあるのですが、子供の頃の刷り込み作用は、大人になっても消えないというのは、本当のことのようで、童話の美しい色を夢見ていたのですが、少しガッカリしました。
海外旅行の苦しみは、いつものことですが、言語の障壁を乗り越えられないという情けない状況に陥ります。今回も、やはり同様で、ホテルを10時に出発して午後6時くらいまで、ほとんどの時間を歩くことに費やしました。
もったいないと言えばもったいないのですが、歩くことで、その国の文化に接することができます。
まず最初に「デザイン博物館」を訪ねました。中世の家具や衣装が展示されているのですが、建物内の陳列・ディスプレイの色使い、雰囲気が気味が悪いというのか、どうも馴染みにくいものでした。1900年初頭に活躍した建築家ヤコブセンが有名なところでした。
コペンハーゲンで最も美しいといわれるカステレット周辺を楽しみました。日本・北海道の五稜郭の原形とされるカステレット要塞があります。その突端には、世界中を魅了した人魚姫の像がありますが、時間の関係で省くことにしました。
デンマークと言えば、LEGO。ここで、LEGOのキーホルダーをお土産に買うことしました。店内は、多国籍の老若男女、多くのLEGOファンでごった返していました。子どもたちが両親に、おねだりをする光景は、どこも同じで、ほほ笑ましい親子の情愛を感じます。
つぎは、国立美術館へ足を運びました。マチスの絵が充実していました。広すぎて、まとまりがなく、ムンクやレンブラントもあるはずなのですが、時間切れで観ることができませんでした。残念としか言いようがありません。
コペンハーゲンの雰囲気を率直に書きますと、社会インフラは、よく整っています。すべて無料で、電車の改札は、いっさい無く、人も、自転車も、犬も同じ車両に乗り合わせて、みんなが、それを理解し相互扶助社会の完成を実感させられました。
それだけお互いがお互いを認め合うなら、身の回りの清潔度を保ち、衛生に配慮するだけでこの国の印象は驚くほど良くなるだろうにと思いました。